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センサネットワーク

ユビキタス研究所 井上博之

センサネットワークへの取り組み

従来の概念でのセンサは、機器や装置に組み込まれていて、自動化や制御や計測を行うためのものであったが、 今後は、広い範囲に配置されるようなセンサや、自動車などの移動体と一体化されて動き回るセンサ(モバイルセンサ) や、人が持ち歩いたり身につけたりするセンサ(ウェアラブルセンサ)などが重要な技術になっていきます。 このようなインテリジェントなセンサ(センサノード)においては、情報を欲する場所にどうやって センサの情報を届けるか、また、センサノードを遠隔からどうやって識別・制御するのかという問題がでてきます。 また、ノード間の通信に無線を使う無線センサネットワークでは、近くのセンサノードがお互いを認識し、 自動的にネットワークを構成し、情報を自律的に運んでいくというアドホックネットワーク(Ad Hoc Network) などの仕組みが重要になってきます。 また、自立したセンサノードにおいては、給電(バッテリー等)をどうするかという問題が重要となります。 このようなテーマに、ユビキタス研究所では、アルゴリズムや方式の検討、それに基づくプロトタイプの設計開発、 ビジネス的な展開について検討を行っています。

センサネットとは

ユビキタス社会におけるセンサネットの役割を考えてみます。 上記の図のように、家の中では照明や空調などの白物家電および情報家電やPCが相互にネットワークを形成し、 例えば撮影が終わったデジカメをHDDレコーダの傍に置くと自動的にアルバム用のフォルダに転送してくれたり、 朝の目覚まし時計に連動してエアコンが入り照明を付けてくれたり、というようなことが可能となります。 このような複数の機器の連携はアプリケーション(応用プログラム)が提供する機能となりますが、 その基礎となる相互の通信や相手の認識という部分でセンサネットワークの技術が使用されることになります。 また、外出先では、携帯端末と周りの機器との間の情報のやりとりや、車と車の間での情報のやり取り (車々間通信)などが、利用者の意識しないところで行われ、その場所や時間に最適なサービスを 受けるようなこともできると考えています。

そのような連携したサービスを、「総務省 ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する調査研究会」では、 ユビキタスセンサネットワークという概念でとらえ、そこでは「身の回りの機械がコミュニケーションし、 自律的に情報を収集・管理する」と考えています。 その将来イメージとしては、次のようなものが挙げられています。

  • ネットワークはインビジブル(目に見えない存在)になり、空気のようなネットワークになる。
  • あらゆる事象を扱え、高精度な位置測定も実現。
  • 機械同士がインテリジェントに、状況に応じてコミュニケーションし、スマートワールドを形成。
  • 身の回りのあらゆるところに機械が存在し、家庭内ネットワーク、 ビルオートメーション(BA)が進展。

センサネットワークの技術と課題

センサネットワークにおける課題に挙げられる技術としては次のようなものがあります。

  • どうやって相手と通信するのか?(IP技術、無線技術)
  • 電源をどう確保するのか?(電源管理技術、ハードウェア設計技術)
  • リソースの少ないハードウェアにソフトウェアをどう載せるか?(OS技術、ソフトウェア技術)

センサネットのIssues

<無線方式>

独立したセンサノードの場合、他者との通信には多くは無線が使用されます(赤外線を使うこともあります)。 センサノードに適用できる無線の方式としては、以下のようなものがあり、特に電池駆動の場合、 低消費電力なZigBeeなどが注目を集めています。 なお、ZigBeeと言った場合、Layer3までのプロトコルを含んだものとなり、Layer1,2の伝送 プロトコルまではIEEE802.15.4で規定されています。Layer3のZigBeeプロトコルに関しては、 標準化の動きが鈍く、IEEE802.15.4の制定から2,3年経ったいまでもまとまっていない状態であり、 各社ともにIEEE802.15.4の上に独自のLayer3プロトコルを搭載しているケースが多くあります。

無線プロトコル

<アドホック通信>

無線センサネットワークおける、センサノードに事前に設定するネットワーク構成を できるだけ最小化し、ノードが故障したり、通信ができなくなったりしたときの耐故障性 を確保するための通信プロトコルとして、アドホック通信の技術が有効です。 しかしながら、決定的な(使うのに便利で、実装も容易な)プロトコルはまだなく、 研究が盛んに行われています。

アドホック通信の概念

<電源と消費電力>

特に電池で駆動される自立型(自律と区別して使っています)のセンサノードにおいては、 電源を節約し、できるだけ長期間動作させるための技術は重要です。 運用を考えると、電池の交換は最低でも1年以上のサイクルが必要で、 できれば3~5年が要求されています。 このような長期間にわたって、センシングと通信を行うには、全ての分野において 消費電力を抑える技術を適用する必要があります。

例えば、下図のような動作モデルを考えた場合、数分間の待機状態と数秒間のセンシングと 通信を行うだけで、それなりの電力を消費してしまうことがわかります。 このような限られた電源の中で、いかにして有効なセンシングと通信を行うかが、 研究開発テーマとなっています。

動作と電力消費量の変化

<少ない計算資源とソフトウェア>

センサノードに使用されるコンピュータ(マイコン)としては、メモリとして数百キロバイトのROM (読み出し専用メモリ)と、数キロバイトのRAM(読み書き可能メモリ)を持つような 非常に少ない資源(リソース)しか持たないものが使用されています。 このような少ない資源の中で、前述のアドホック通信や電力制御のような制御を行うような ソフトウェアを開発する必要があります。 また、小型で効率のよいOS(Operating System)も必要となります。

センサノードのソフトウェア構成


センサネットワークの課題への挑戦

アドホック通信として提案されているプロトコルは多くありますが、電池駆動の無線センサノードに 適した方式としてなかなか決め手がないのが現状です。ユビキタス研究所では、無線アドホック通信 とIPv6技術を活用した通信方式についても検討を行っています。

アドホックネットワーク構成

また、待機時の電力を大きく削減できるようなハードウェアについても検討を行っています。 センシングの間隔は間欠的でよいことから、1分~10分間隔程度でウェイクアップを行い、 次の時刻まで完全休止を行うようなハードウェアとして、マイコンによる電源制御+RTCチップ との組み合わせで、休眠状態でのバッテリー消費電流をほとんどゼロにできることを目標としています。 (RTC = Real-Time Clock)

  • 方式(1)
    • センサや通信などの周辺回路をOFFし、マイコンはRTCにウェイクアップする時刻をセットし、 割り込み可能とする。
    • マイコンは、できるだけ電力を消費しない休止状態に移行し、RTCからの割り込みで復帰する。
    • 復帰後、センシングや通信を行い、再び休止する。
    • 特徴
      • 割り込みで復帰するので、前回の状態を保持したまま、マイコンが復帰できる。
      • 休止中も、電源回路とマイコンとRTCが通電されているので、それなりに電力を消費してしまう。

センサノードの電力管理1

  • 方式(2)
    • マイコンはRTCにウェイクアップする時刻をセットし、センサや通信などの周辺回路を含むマイコンを含む回路をOFFする。
    • RTCからの割り込みで簡単なCMOSロジック回路でマイコンの通電を行い、マイコンに復帰処理を行わせる。
    • 復帰後、センシングや通信を行い、再び電源をOFFにする。
    • 特徴
      • マイコンの初期化処理を復帰時に毎回必要となる。
      • (1)と比較して、マイコンの待機電力が不要となる。

センサノードの電力管理2

  • 方式(3)
    • (2)でOFFする対象物を電源回路とし、電源回路を待機状態にさせる。
    • RTCからの割り込みで簡単なCMOSロジック回路で電源回路の通電を行い、マイコンに復帰処理を行わせる。
    • 復帰後、センシングや通信を行い、再び電源をOFFにする。
    • 特徴
      • (2)と比較して、さらに電源回路の動作時電力が不要となる。

センサノードの電力管理3

このような方式の検討(実験)のために、自律型のセンサノードのプロトタイプの開発も行っています。 下記のボードは、ユビキタス研究所で設計・開発を行った、通信媒体にZigBee(正確にはIEEE802.15.4) を使用している、電池駆動の自律型センサノードのプロトタイプです。

ZigBee開発

センサネットワークの今後と展開

センサネットワークによる応用分野の可能性とその期待は非常に大きいが、小型のセンサノードを使った システムの多くはまだ研究・実験段階なのが現状です。 この理由として、センサノードの開発・配置・運用に必要なコストに見合うような決定的な応用やサービスが ないことが挙げられます。 また、特に小型の無線センサノードを大規模展開する場合には、長期間に渡る電源の確保の問題と、 センサノード自体の価格の問題がネックになりがちです。 今後は、産官学が共同でハードウェアおよびソフトウェアのプラットフォームのオープン化をすすめ、 低コストな開発環境の提供などを積極的に実施していく必要があると考えています。 しかしながら、既存の家電製品や有線ネットワークを使った装置については、低消費電力の無線通信技術や アドホックな通信網の自動構成技術やデータ取得技術等のセンサネットワーク技術を応用した製品が早い段階で 期待できると思われます。 特に、家庭やオフィスでの環境制御、家電制御、子供・老人の見守りシステム、介護・医療分野などの分野は 有望であると考えており、今後ビジネス的な展開を目指していきます。

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