INTEROP Tokyo 2008 ShowNet構築参加報告 (3)
ShowNetを作るメンバー
ここではShowNetを企画・設計・構築・運用するメンバーについて目を向けてみる。
これまでにも述べたとおり、ShowNetはその時代の最新技術を投入するため、メーカー・ベンダーからは最新の機器を提供頂くと共にこれら機材のサポートを行うためにサポートエンジニアの方にもコントリビュータとして参加して頂いている。特にShowNetでコントリビュータとなられている方は、日本でも有数のトップエンジニアの方ばかりとなっており、何か起きた際にも万全の体制が取れるようになっている。
ただ、これらコントリビュータの方だけではShowNetは構築できない。例えば、ShowNetとして「何を実現するか?」、「何をメッセージとして伝えるか?」 といったテーマについてはこれらの方ではまとめられないためである。したがってテーマを決めるといった部分はNOCメンバーと呼ばれる人たちで運営されている。また、上記以外にも、ShowNetを設計・構築・運用するために必要な全ての事項を調整することもNOCメンバーの役割である。 このNOCメンバーも様々な人によって構成されている。学術系から参加されている人やメーカ・機器ベンダーから参加されている人など出身一つを取っても非常に多岐に渡っているが、全員の共通点としてはShowNet全体の成功を共通理念として持って活動しているということである。 また、ShowNetに関わるメンバーという意味ではSTM(ShowNet Team Member)も欠かせない。STMは公募によって選定されるShowNet構築メンバーであり、大学・専門学校や一般企業からボランティアで参加しているメンバーである。ShowNetでは前述の通り多くの目的を持って構築されるため、この趣旨や経験をより多くの人で共有することを目的として初年度よりこの形態をとっている。
私は過去 STMという立場で何回かShowNet構築に参加して来たが、今年は初めてNOCメンバーとして参加した。NOCメンバーではShowNetを構築するために必要な作業を分担して対応を行っているが、私もこの中でいくつかの作業を担当した。これまでのSTMという立場では見えていなかった作業を通じて非常に多くの事を学ぶことが出来たので、担当していた業務の概要とトピックを簡単にまとめたいと思う。
- ラックレイアウト、ラックマウント担当
- ラック電源担当
- STMディスパッチャー担当
1.については、INTEROP2008にお越し頂いた方ならば実際の様子をお目にされたかと思うが、ホール2 NOC並びにホール4 NOCのラックレイアウト並びに機器配置検討を行う役割である。一言でレイアウト検討と言っても、考慮しなければならない事項は多岐に渡る。 ラックマウントの基本である、耐荷重を設計しての機器搭載を検討することはもちろん、ショーである以上、「美しさ」・「機能性」を高いレベルで実現しなければならない。特に、今年はNOCのラックが2階入り口から展示フロアに移動した事もあり、より来場者の方へのプレゼンスを考慮する必要があった。 その上、提供される機材の仕様や型番は構築直前まで確定しなかったり、構築中の変更なども幾度となく発生したりするため、この度に追加搭載や積み替えなども必要になる。また、出品各社からご提供頂く機器である以上、機器への視認性の確保にも神経を使う。特にメーカー・ベンダー間で不公平にならないように、設置位置をラック毎に調整するといった細やかな対応も必要となる。また、機器配置を行う上では配線のことも事前に検討しておかなければならない。特に管理用ネットワーク周りやTAP装置(ネットワークを分岐するための装置)周り、出展者向けのケーブルなどについては、非常に多くの配線が発生するため収容する機器を想定した上で、機器間の配線も集約できる形でまとめなければならない。配線ルートを考慮しない場合、非常に長距離に渡って何本もケーブルが行き交うことになり見た目にもケーブルリソース的にも無駄が多く発生してしまうためである。 また、全てが事前に決っている訳では無いと言うこともイベントネットワークならではと言える。今年はホール2のNOCについては3面構成となっており面毎に機能を分けたが、この事も事前に決定していた訳ではない。現地に入ってからの要求事項として出てきた事項であるが、もともとの配置として機能別に分割するというポリシーに基づいて対応していたことで、このような急な要求があっても柔軟に対応することが出来たといえる。
このような多くの制約事項がある反面、結果が形となって直ぐに現れるためわかり易く、非常に遣り甲斐があった。


ShowNetラック
2.のラック電源担当の役割は、各機器への電源配置の検討及び収容機器の決定である。内容的には物理作業に近いということで1の作業にも非常に密接である。 ただ、一言に電源といっても、このShowNetで使われる機材を取っても様々である。AC100V、AC200V、DC48V等、元々想定されている使用場所・シーンなどでそれぞれ必要とする電源が異なっているのである。例えば、伝送装置は主に局社内での利用がメインということもありDC48Vで駆動するものが多い。一方、サーバ等1筐体でも多くの電力を必要とする機材ではAC200Vを必要としたりする。また、ネットワーク機材のようにAC100Vだが、冗長電源の機能により複数系統での供給が必須といった物も存在する。更に悩ましい事として、電源冗長と一言に言ってもn+1構成なのか、アクティブ・スタンバイ系なのかといった機能の違いが存在することである。これら機能の違いによっても接続方法を別で検討する必要もある。更に、消費電流・電圧によってプラグ形状も異なる。
昨年まではUPS(無停電電源装置)が配備され、UPSの負荷メータによる収容容量の簡易的な確認も可能であったが、今年はUPS無しでの構成となりこの方式が採れなくなった。その対策として電源系統毎にラック環境測定ツールを利用しての電流値測定を行い、収容を行う事で全機器のバランスを確保した。今回はラック環境測定ツールをこのような使い方で利用したが、現在の省エネという観点においても非常に有効なデータを取得することが出来るため、今後も広く普及するものであると考えられる。

ラック環境測定ツール
3.のSTMディスパッチャーというのは、一言で言い表すならばShowNetを構築する中で発生する様々なタスクをSTMメンバーに対して割り振り、完了させることでShowNet全体を完成へと結びつける役割を担うものである。全体の構築進捗を把握して現在の問題を解決すると共に、次に発生する作業を予測して準備する必要もある。また、的確な指示を出すためにも技術的な面においても全体を把握しなければならない。 一方で、作業をお願いするSTM全員へのメンタル・フィジカル両面でのケアも必要である。32名という大人数の各個人の体調管理、精神的なフォロー等々数えればキリがない。論理/技術とヒューマンインタフェースを一手に担い、やる事も膨大であるがその分遣り甲斐も大きく、ShowNetでもひと際重要な役割である。
ここからはSTM選考のプロセスについて簡単に説明する。STMもメーカー・ベンダーなどの一般企業の方や学術関係の方で構成されており、すべて公募によって選考したボランティアである。

ShowNetスポンサーシッププログラム参加団体及びSTM参加者一覧

ShowNetを支えるメンバーの構成

ShowNetスポンサーシッププログラム参加団体(主要団体)
公募は毎年3月~4月位にINTEROPの公式Webサイト内にて実施し、誰でも申し込むことが出来る。公募後、STMはどのような作業を行って、何が必要とされるか?などの説明会を実施する。ここでは集団面接も実施し、これらを通じてSTM活動にあたって具体的な内容の説明を行い、参加希望者に質疑応答の場が設けられる。オペレーション体制の見直しなどによりSTMの人数自体も見直しがなされ、年々狭き門になってきているが、こう言ったフェイストゥフェイスのやり取りにより、より密度の高い人選が行えるような状況にしている。その後、上記の結果を踏まえてNOCメンバーでの議論の後STMメンバーを決定している。
ところでこのSTMの要員構成も非常に面白いものである。大学・専門学校の学生さんと社会人がほぼ半分位だろうか。学生さんのエネルギー溢れる考え方や、プログラミング能力、世間に毒されていない見方など非常に参考になる部分は多いし、逆に学生さんにとってみれば社会経験を踏まえた視点からの刺激が受けられるなどの事がうまく相互作用していると思われる。
実際の作業に当たっては、NOCメンバーが中心となって動かしていくことが原則である。その中で、STMも頑張っていることも少なくない。自身のやる気が最優先されるため、やる気があればどんどんチャレンジしてゆくことができる。当然、実績が無い段階ではどのくらいのスキルレベルなのかなどの基本的な情報が無いため、作業を任されるという事は難しいが、回数を重ねる度、NOCメンバーとコミュニケーションを取る度に信頼度も上がり作業を任される機会が増える。このあたりは通常の仕事と同じである。
また、このような短期決戦プロジェクトでは情報を上手く共有する事が非常に難しい問題となる。先にも説明したとおり、参加しているメンバーとしてはSTMやNOCメンバーやメーカー・ベンダーの方と非常に多岐にわたり、しばしばミスコミュニケーションにより手戻りが発生しがちである。この部分においてShowNetではトラブルチケットデータベースというこのイベントに特化したデータベースシステムを用いて共有を行っている。問題が発覚したら、まずトラブルチケットに入力→チケットをハンドルする人が適切な人に割り当て、作業開始→作業完了後にトラブルを申告してきた方に確認してもらってClose この流れですべての問題を管理しているのである。このようなツール類を上手く活用しながら、ShowNetに関わるメンバー間で上手く情報共有して一つ一つ作業をこなす積み重ねにより、ShowNetといった大きなネットワークを構築してゆく推進力になってゆくのである。
(2008/07/27 17:57 清水 隆宏)
- Index
- INTEROPとShowNet
- 今年のShowNetの見所
- ShowNetを作るメンバー
- ShowNetの構築
- まとめ
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