ShowNetを通じて見えたIPv6(その4 今年のShowNetの見所)
ここでは今年のShowNetでのメッセージポイントについて整理を行いまとめとする。今年のポイントは主に下記であったと考えられる。
- Internetの最新技術
- 広帯域・高品質の追求
- セキュリティ技術
- IPv6 Ready
1については、4Octes AS番号利用のデモや、AS跨ぎのIP Multicast通信、セキュリティ機能を伴ったワイヤレス通信の積極利用、レイヤ毎の冗長化機構(Ethernetにおけるリングプロテクション、伝送装置におけるROADM技術等)の利用が挙げられる。特に、今後ともにInternet基盤が情報基盤として成熟期に突入してゆくと共に必要とされる安定性や高セキュリティ機能・アイディアなども数多く登場し、これらを実現する各種機能が規格・機器への実装が進められている。今回のShowNetでもこれらは積極的に利用されることで既に利用可能なフェーズであることが実証されたと考えられる。また、近年の放送と通信の融合の中で注目を集め始めたIP Multicast通信についても取り扱われた。そもそもIP Multicast通信についてはShowNetでは以前より取り組まれていたが、単独組織のネットワーク内のみの展開であった。今年は自ネットワークに留まらず、他ネットワークを跨いでの接続、更に海外のIP Multicast網へと接続といったようなより広域なIP Multicastネットワークにチャレンジし、実現することができたと考えられる。
2については、広帯域という事でこれまでに引き続き10Gigabit Interface(10G-Base-LR)の積極利用や、大手町~幕張間の接続回線として OC-768(40Gigabit)が利用された。今後についてもInterfaceの速度向上は続くものと考えられる。また、各種Flow系ツールも多数利用され、Traffic Flowについての解析が実施された。その他、監視運用系での長年の課題である、Inboundトラフィック(実際の顧客の通信)の監視・品質観測方法についても、実際の加入者に成り代わって接続し通信品質などを測定するツールが導入され、Pingレベルでは観測できない特性を観測することができたと言える。また、それらをマネージメントするための大規模なOutboundネットワークが構築され、すべての機材が接続されるような形態をとることであらゆる場合においても管理できるような構成をとっていた。
3については、各種Flow系の技術を用いて攻撃トラフィックの抽出や Blackhole Netを設けての攻撃通信の抽出を行ったほか、フィルタ設定やuRPF(Unicast Reverse Path Forwarding)による経路情報に基づく動的フィルタ設定、持込PCに対して安全にWindows Updateを行うための専用セグメントなど各種ネットワーク構築を行った。今年はキャリアモデルでのセキュリティ技術の適用ということで、ファイアウォールなどの付加デバイスを投入しない形でのセキュリティ対策という手法が取られたが、経路情報ベースでフィルタを自動生成するuRPFや、ボーダルータでの特定Portへのフィルタ、利用していないネットワークアドレス宛への通信解析による攻撃検知などシンプルであるが、奥が深い方策が取られていたと考えられる。
4については、例年通りShowNet全体をIPv4/6のデュアルスタックでのネットワーク設計を行うことに加え、今年から初挑戦した事項としてIPv6のみのクライアントネットワークを構築したということがトピックとして挙げられる。実際にご覧になった方もいらっしゃると思うが、お茶を飲みながらネットサーフィンできる場所として設けられたShowNetCafeでIPv6のみのネットワークを構築した。ここでは、来場者様がご自身のPCを接続して利用するIPv4/6デュアルスタックなネットワーク接続環境に加えて、PCごと設置してある席も存在していた。このPCとセットになった席の環境は、 IPv6のみの提供となっていたのである。 これまでもルータやスイッチなどネットワーク機器としてはIPv4/6両対応ということが数年前より叫ばれ、 ShowNetでもIPv4/6ともに同一トポロジでの設計が実施されてきているが、実際にHostが利用するセグメントとしてIPv6のみで提供するということは無かったのでは無かろうか。なぜなら、IPv6対応と言っても実際のアプリケーションが動作するレベルではどこかの段階でIPv4が必要な物があったりするなど、全くIPv4が存在しない環境を考えた物がほとんど存在しなかったように思えるからである。
しかし状況は変わった。今年はVistaという新たなプラットフォームが加わったことで、IPv6のみ環境構築が現実的な物となったといえる。なにせ、OSとしてIPv6をフルサポートしているのである。IPv4が必須ではなくなり、設定画面としてはIPv6にチェックさえすればIPv4のチェックは有っても無くても良いのである。
とはいえ、クライアント環境がIPv6に対応しても、逆にインターネット上のサイト全てがIPv6に対応しているか?と言えばその答えは“いいえ”と言わざるを得ない。そのため、これらのIPv4のみサービスしているWEBサイトを救済するために IPv4-IPv6トランスレータを用いた。トランスレータを用いる事で、 IPv6しか接続性を持っていないPCでもIPv4のみのサイトに接続可能となる。トランスレータを介する事でIPv4→ IPv6へと翻訳し既存のIPv4インターネットリソースも有効活用できるのである。どんどんIPv6化が進んでいく中での過渡期におけるトランスレータの役割というのは重要である。

今回のShowNetCafeでのデモでは、今後加速されるネットワークのIPv6化の究極の形態であったと考えられるが、実際に対象となると考えられる企業等のネットワーク全てを想定した形ではない。そのため、このデモの結果をもってIPv6のみのネットワークが現実的か?という問いの回答にはなり切れていない面も存在するが、実際にIPv6 のみのクライアント環境として利用できた!という事実は大きな一歩であることに違いはない。非常に記念すべき環境のデモになったと思っている。
一時のインターネット業界におけるような新技術のラッシュは昨今では発生していないため、トピック的には地味に見えてしまうわけであるが、逆に言えばこれまで登場した技術が色々と精査され、こなれてきた段階であるとも言える。これまでのIPv6の普及推進という形では色々な形で取り組みがなされたが、実際IPv4ありきのIPv6で在ったことが否めないのではなかろうか。その観点で見れば特に4番目のIPv6のみのクライアント環境のデモというのは非常に面白い取り組みだったと思う。
その1 INTEROPとShowNet へ
その2 ShowNetを作るメンバー へ
その3 STMの作業 へ
その4 今年のShowNetの見所
その5 まとめ へ
INTEROP Tokyo 2007 公式サイト
INTEROP Tokyo 2007 公式サイト内 ShowNet紹介ページ
(2007/06/21 20:26 清水 隆宏)
