ShowNetを通じて見えたIPv6(その1 INTEROPとShowNet)
先週開催されたINTEROP Tokyo 2007でのShowNet構築にSTM(Shownet Team Member)という形で参加した。INTEROP ではこれまでIPv6の普及に向けたテストベッドとして大規模な形で取り組みがな されてきており、今年もIPv6が活用された。ここではINTEROPを通じて見えた最新ネットワークトピックを、裏舞台であるShowNet・STMの視点から紹介する。
その前にINTEROP、ShowNet、STMについて説明する。INTEROPについては WiMAXシアター の回でも述べたとおり、 アジア最大のITイベントで毎年幕張メッセにおいて行われている。イベントでは著名人の講演などを行うカンファレンスとメーカー・ベンダーと言った各企業が自社の製品を出展する展示会が実施される。特に展示会の知名度は高く、メーカー・ベンダーもこの時期に新製品・新サービスをリリースする等、ビジネスにも広く活用されている。本年も展示会の合計参加者も16万人弱と非常に多くの方が来場された。しかし、次のキーワードであるShowNetやSTMについてご存知の方は多くは無いと思う。

まず、ShowNetとはINTEROPという展示会に出展されるメーカー・ベンダー等のお客様に対してインターネットへの接続性を提供するためのネットワークであり、STM とはShowNetを構築するメンバーの一員という位置づけになっている。
ShowNetについて更に説明を加えるならば、INTEROP Tokyo 2007の展示会に出展される300を超える企業・団体のお客様に対しインターネットへの接続性を提供することが主目的としており、出展者様はこの接続性を利用して自社製品のデモや出展者様同士がコラボレーションしてのデモを行っている。また、来場者向けにもShowNet Café(インターネットカフェ)の場を提供することで、生のShowNetを体験して頂くことが可能となっている。 このネットワークを構成するために会場となる幕張メッセでは、縦横無尽に光ファイバーケーブルやUTPケーブルが張り巡らされ、その距離は実に100km超にも及ぶ。また、ネットワークを形成するために、多数のネットワーク機器も組合せ利用されており、その数実に大小合わせて数百~数千台にも上っている。一部は幕張メッセ2F入口やホール毎に設置されたラック群で目にする事ができるが、実際は幕張メッセだけに留まらず、インターネットへの接続拠点として利用している東京大手町にまで及んでいるのである。ShowNetの規模感を言い表すのは非常に難しいが、これまで説明した利用者数・ケーブルの長さ・ネットワーク機器の台数などから、実際にサービスを提供しているISP(Internet Service Provider:インターネットサービスプロバイダ)と遜色無いクラス、若しくはそれ以上のネットワーク規模となっていると言える。
これらは多くの機器ベンダーや回線事業者などからのスポンサーシップにより提供された機材・部材を用いて構成されており、多種多様な機材が入り混じったネットワークである。この複数の機器が入り混じる事というのがShowNetでは非常に重要なポイントである。異なる機器同士で接続が可能になるか? プロトコルが正しく動作するか? などの機器間の相互接続検証を行う事もShowNetの重要な目的の一つである。そもそもこの展示会のINTEROPという名前もこのShowNetで行われる相互接続検証=”INTER”+“OPerability”という言葉に由来しているほど、意味深いネットワークなのである。
なぜ、そんな相互接続検証が必要なのか?という点について補足をする。本来インターネット関連技術はIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.:アメリカに本部を持つ電気・電子技術の学会)やRFC(Request for Comments:IETF(Internet Engineering Task Force)による技術仕様の公開形式)等で標準化がなされて世の中に広まるのであるが、ネットワーク機器メーカーが機器の機能として実装する際には色々な手法が存在し、実際にはメーカー毎の差異が発生してしまうものである。しかしこれらの問題は実際に組み合わせてみないと明らかにならない事でもあり、どちらか一方の問題だけではなかったりする。これまでにも新しいIPv6のルーティングプロトコルの登場時、10GigabitEthernetの登場時など、その時代の最新技術が登場する度に異メーカー・ベンダー間の相互接続がなされ数々の問題をクリアしてきているのである。
最後にShowNetとして最も忘れてはならないテーマとしては ShowのためのNetであるということである。つまり、来場者の方やプレスの方を通じて将来のインターネットに対する、メッセージの発信基地としての役割がある。それは日本国内のみならず、世界に対してということは言うまでもない。 単純にコネクティビティを提供するためだけのネットワークであれば、もっと簡単な設計も可能である。また、特定メーカーに偏ったネットワークであれば、相互接続問題などは考えなくてもよい。だが、前出2つの課題をクリアした上で更にメッセージ性を与えるということで究極の課題が課されているのである。そのため、通常のISPなどでは滅多に使われないような技術が投入され、インターネット技術の可能性というものを色々な形で実証しているのである。 例えば、ShowNetではここ数年IPを用いたMulticast通信を取り組んできているが、同一組織内のみの通信に限っていた。今年は更に一歩踏み込んで組織を跨いだ Multicast通信を行うというチャレンジを行っている。これは、現在の業界・行政などで叫ばれている通信と放送の融合をターゲットとして見据え、鍵になると考えられるIP Multicast技術の持つポテンシャルを評価すると共に実際の環境に近い構成を先取りする実験の一環であるためである。
これら相互接続に関連する問題をクリアし、世界に対してメッセージを発信してゆくネットワークでありながら、展示会中は安定的に稼動させるネットワークとして構築されるのがShowNetの真骨頂である。
次に、このShowNetを構築するに当たり、どの位時間が掛けられているかについて説明する。その年のShowNetで実施する内容などの議論は前年のINTEROP終了時からスタートするといっても過言ではない。コンセプト立案~設計へと具現化してゆくまでには、約9ヶ月という膨大な時間を費やし、上記の様々なテーマを盛り込むのである。その反面、実際のネットワーク構築は会場での事前構築(HotStage)及び本構築を合わせても約2週間という極めて短い時間で実現されている。イベントという性質上、長期に渡る機材調達・会場調達が困難になるためである。しかし、この極めて短い時間という制約においても、やり遂げるための背景がある。それはShowNetに関係するメンバーと、効率的なオペレーションにより支えられているためである。次からはこれらShowNetを支えるメンバーについて紹介する。
その1 INTEROPとShowNet
その2 ShowNetを作るメンバー へ
その3 STMの作業 へ
その4 今年のShowNetの見所 へ
その5 まとめ へ
INTEROP Tokyo 2007 公式サイト
INTEROP Tokyo 2007 公式サイト内 ShowNet紹介ページ
(2007/06/21 20:07 清水 隆宏)
